あとがき

 職場、地域で、ぶつぶつ独り言をいう人間にあうことはないだろうか。独り言というと気味悪い
ととらえられるが、こういう独り言は必要であった。この独り言により、この独り言を聞いた人が
すぐ答えることにより、仕事が進んだ経験はないだろうか。この独り言はコミュニケーション手
段として必要だったのである。独り言は相手を特定できないためにどうしても生まれる。この独
り言は、この集団ならばすぐ反応するなと思い、その集団に近づき情報を伝えるという特性を持
っている。すなわち、特定の集団を見つけ、必要な情報を伝え、すぐの反応を期待する。それは
まさしく、掲示板型コミュニケーションであった。この独り言が技術の進歩により、掲示板型コミュ
ニケーションとして現れ、市民権をえたのである。。
 若いアーティストの作詞したものを見ると、つぶやき、独り言の要素が多く、自分が感じたまま
をそのまま作詞したものになっている。それが、多くの若者の共感を生み、爆発的に売れている。
まさに、独り言の時代といえるのではないだろうか。
 この独り言が時間と場所を超えて流れ、それが情報縁となって、対象が定まり新たな展開を
生む。インターネットやイントラネットにより、様々な交流が行き交い、物質優先の社会にあって、
心が主軸になっていく兆しが現れてきているように思う。来る21世紀は心の時代となることが予
感される。
 本書の最初に、できるだけ安く簡単にイントラネットを構築するという目的で4台のパソコンでの
ネットワークを考えた。もし、各世帯に平均4台のパソコンが設置されると、総世帯からして、大変
な金額が動き消費されることが予想される。また、イントラネットを含む電脳化の促進が住宅の新
築、改築に及び、一般家庭の消費を押し上げ、ひいては景気対策につながるように思う。
 現在景気が伸びないないのは、一般家庭の消費が伸びないことにあると言われている。充足し
てしまって買うものがないのが主な原因らしいが、不足と思わせる状況設定が必要になると思う。
その不足と思わせる状況設定にイントラネットがなっていくことを期待し、また新たな展開を期待す
るものである。
 教育の改革について、イントラネットの構築と観念主義の打破の2つの方向から提案した。観念
主義について補足すると、教員養成系の大学、学部の学者の論文がある。一度でも見ていれば
わかると思うが、何を書いてあるのかさっぱりわからないしろものになっている。それがわかるの
は多分書いた本人か、あるいはそれに近いことを研究している人しかいない。すなわち、きわめて
限られた閉鎖社会の中でチェックされることもなく、批判されることもなくきてしまっている。そこには
現実と乖離し、ひとり歩きしていく要素を多分に持った温床となりやすい。
 非現実な世界も狭いところで適用すれば、それなりに効果がある。それのさいたるものはゲーム
であり、ひとり楽しむのに最適なものになっている。
 その非現実なことを現実に適応したものがある。その例として、早稲田大学の学歴抹消事件が
ある。それはどういうことかというと、学生が大学で勉強してきた歴史そのものを消しゴムで消す
ように消し去るものであった。卒業生にも適応したものであり、これほど現実と乖離した処置はなく、
この処置が青少年に与えた衝撃は根深いものがある。学歴信仰が産んだゆがみとしかいえなく、
観念主義者の横行としかいえない。
 もう一つ非現実なことを現実に適応したものを挙げると、太平洋戦争がある。その当時軍部が
政権を握っており、八紘一宇が当時支配していた思想であった。心あるものは、物量において
はるかに凌駕しているアメリカを相手に戦うなど無謀極まらないと思っていた。しかし誰も止める
ことができなく、太平洋戦争をおこし、多大の犠牲を国民に強いる結果になった。そして、敗戦、
総懺悔、戦後の復興へとつながっていく
 現在にあてはめてみると、諫早湾の問題がある。これも最初に理念ありきで、実際、どのよう
なことがおこるのかの調査の不備が指摘されている。この理念、事業目的でさえ、いろいろ変
わっているという状況で、これも観念主義者の横行の疑念を強く感じる。
 疑念といえば、青少年を中心に普及しているパソコンである。これは、使い方により、
非現実なものを容易に生み出すことができ、すべてパソコンで処理してしまおうという風潮があ
る。これも危険で、青少年にとって、有害なものになる恐れがある。このことは、机の上で考え
ることから、パソコンで考えることに変わったことを意味し、観念主義を強化してしまう恐れが強
い。パソコンを使う教育において、いかに現実を直視できるかが重要になってくる。
 長野県知事の現場主義の考え方は、本書で述べている観念主義の打破と相通ずるものが
あり、長野県民ではないが、今後の動向に興味を持って注目している。
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