3 モデルとしての障害児教育

 すべての生物は固体としては一定の寿命の間に死滅するが、神秘な生殖の力によって、その
生命は次の世代にうけつがれていく。その過程のどこかで、幾多の偶然遭遇した事故や出会い
によって、心身の機能に損傷をうける。その障害は症状、程度とも一人ひとり異なっている。その
ため、特別な教育的配慮の必要から1クラスの人数が少なく、個々の障害に応じた手厚くきめ細
やかな指導、支援がなされる。
 心身機能障害児教育においては、効率主義の視点からみていた教育をまともに根底からくつが
えす。そこでは、一から、教育するとは何かを考えなおすことなくしては出発できないからである。
つまり心身、殊に知的機能の重度障害を負うものをとりあげて、教育ゼロのそこに全教育的努力
を傾けて、その子の心身の覚醒と伸張をはかり、人間としての喜悦を感得させようとする。この殆ど
不可能に近い努力や苦悩が、当の子どものかすかな反応に遭って、満足感となり、実は教育とは
こういう努力のことだったのかとの悟りに似た境地に至るのである。
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