「金八先生」というドラマがある。学校に何か問題が起こると、金八先生という、子どもの心をど
こまでもわかってあげようとする熱血教師が出てきて、悩み苦しみ、そしてその情熱が子どもの
心に通じ、最後には教師と生徒の真の信頼関係が回復するという「感動」ドラマである。このド
ラマの構成の特徴として、授業そのものを見せていないか、ほとんど見せていないことがあげら
れると思う。肝心なところが抜け落ち、教師と生徒の真の信頼関係の樹立が主なテーマとなって
いる。このドラマが、錯覚を与えた。教師と生徒の信頼関係の崩壊は、人間的な努力や情熱で解
決できるという幻想である。このドラマの制作者は、現実認識をもたずに先生の理想像をこねあげ
てしまったのである。 |