8 観念主義者の横行(4)

 「金八先生」というドラマがある。学校に何か問題が起こると、金八先生という、子どもの心をど
こまでもわかってあげようとする熱血教師が出てきて、悩み苦しみ、そしてその情熱が子どもの
心に通じ、最後には教師と生徒の真の信頼関係が回復するという「感動」ドラマである。このド
ラマの構成の特徴として、授業そのものを見せていないか、ほとんど見せていないことがあげら
れると思う。肝心なところが抜け落ち、教師と生徒の真の信頼関係の樹立が主なテーマとなって
いる。このドラマが、錯覚を与えた。教師と生徒の信頼関係の崩壊は、人間的な努力や情熱で解
決できるという幻想である。このドラマの制作者は、現実認識をもたずに先生の理想像をこねあげ
てしまったのである。
 そして、その理想像にひとりひとりの教師が近づくことが、学校問題を解決するという考え方をは
びこらせてしまっている。そういう教師観が、一職業人としての守備範囲と限界をはみだした、実行
不可能な期待を教師におしつけてきたように思えてならない。
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