第5章 イントラネット構築と学校

 前の章でイントラネットが組織、社会に与える影響について述べたが、具体的に組織を学校ととらえた場合、想定される変化について述べてみたいと思う。

1 授業のありかたが変わる?

 イントラネットを学校の授業にもちこんだとき、何が変わるだろうか。教科の授業を捉えるとき、教師が一方的に知識、技術を教える形態が思いつくが、そのときそこで学ぶ児童・生徒は少なからず疑問に思うことや質問したいことがある場合が多い。しかし、学校にもよるし、教える先生にもよるが、日本の教室ではあまり質問をしない。つまらぬ質問をして皆に馬鹿にされることを恐れたり、皆に気兼ねして質問しない、などということが多い。また、教える方からも過密な教材を計画どおり教えなければならず、進度状況から、口ではどんな質問でも受け付けると言うが、過度の質問には閉口せざるおえない。ある高校の調査で、質問したいときに便利なものとして、周りを気にすることなく質問できる何らかの「場」の存在が望ましいことがわかっている。彼らが欲している「場」は
 1 生徒どうしの対話ができる
 2 試行錯誤が十分に行える
 3 時間帯、場所、内容に関わらず質問がしやすい
 というものである。
 授業は、ねらいをもとに、ある教室を使って、一定の学習集団に対して、一定の教材を教師が意図
的教育を施すものとして捉えられ、その授業における学習活動の特徴は

ア 教師が黒板等に書いて、児童・生徒と教える内容についての情報を共有しながら進む。
イ 必要に応じてプリントを配り、書き込んでもらい、提出。
ウ 教師が内容を説明し、それに対して質問を受け、答えていくあるいは支援していく。
エ 教師が個人的に質問を受け、答えていくあるいは支援していく。
オ 児童・生徒同士が会話、協力しながら、支援しあう。
カ 児童・生徒が皆の前で発表し、それに対して質問を受け、答えていく。
 この学習活動が、インターネットあるいはイントラネットである程度可能になっている。それはどうい
うことであるかというと、CGI等の技術でWebページへの閲覧を制限するという情報管理技術で、一
定の学習集団をつくることが可能である。上記のア〜カに対応するものをインターネットあるいはイン
トラネット上で求めると、

ア’:教師がWebページをアップロードし、児童生徒がそのWebページを見るこ と。
イ’: メール及びメーリングリスト。
ウ’: 電子掲示板、電子会議室、チャット(掲示板型コミュニケーション)の利用。
エ’、オ’: メールの利用。
カ’:児童・生徒がWebページをアップロードし、他の児童・生徒がそのWebページを見ること
 こういうバーチャル・クラスルームは、従来の教室で行う授業にはない以下の特徴があり生徒が欲し
ている場を提供する。

@ 時間や場所に拘束されない
A 情報の伝達が文字中心のため、従来の音声中心の伝達に比べて、試行錯誤が十分 に行え、疑
   問に思ったことに対して周りを気にせず質問がしやすい。
B 生徒どうしの対話ができる。
 上記の特徴をもつバーチャル・クラスルームを実現するイントラネットを学校内に設けた場合、イントラ
ネットが稼働している好きな時間に、またイントラネット内のどのパソコンからでも、アクセスして情報を
提供したり、情報を見たり、それに対して質問が自由にできる。情報を提供したり、質問に答えたりす
る人は、その授業の教師に限定されることがなくなり、そのイントラネット内に関わる人すべてが、質問
に答えたり、支援したりすることができる。 学校全体にイントラネットが構築されれば、その学校にいる
生徒、教職員の支援が得られる。今までは、教科の学習は教える先生の力量によることが多分にあっ
たが、教科の先生全体の支援がある程度可能になるものと思われる。 
 また、情報が校内のイントラネットと限定されるため、個人情報の保護等に配慮する必要が少なく、
通信料に気にすることもなく使え、重い画像に対しても、ストレスが少なく操作できる。
 しかし授業において大事な要素として、教師と児童・生徒間や児童・生徒間の会話がある。会話の
研究において、「メイラビアンの法則」がある。その法則では、会話の中で人間が「話の内容」から受
ける影響はたったの7%。残りの93%は、話し方や声の抑揚といった「発声」に関する影響が38%、
身振り・手振りなどの「ボディランゲージ」が55%であることがわかっている。話し方や声の抑揚とい
った「発声」や「ボディランゲージ」を文字中心のバーチャル・クラスルームで実現するのは難しい。
 現在の技術、制度では、従来の授業を補間する形でバーチャル・クラスルームが発達するように思
うし、従来の教育を補間する形で遠隔教育が進展していくものと思われる。
Copyright(c)2001.1 Planet,All Rights Reserved.