1 社会が変わる

  こういったイントラネットは日本の組織、職場、社会を変革するものと思われる。なぜならば、日本の社会において熟練者は達人として尊敬されるが、その経験を分解して、誰にでもできるようにしようとする考え方がないからである。その経験は達人だけのものであり、皆と共有されることもなく発展することもない。その達人がいなくなると、たちどころに困ったり、機能しなくなったりすることがある。WWWサーバーによる情報の共有化の進展が、達人の経験を分散させ、その経験を利用して新しいことに取り組むことを可能にしてくれる。
文字の発明が人類に記録の手段を与え文化の進展に多大な貢献をしたことからして高く評価できるものと思われる。
 また、協同で作業、業務をおこなうグループウエアを実現することができる。そして、WWWのメリットは、画像や音声などを含んだマルチメディア文書を表現できることに加え、リンク機能を使って別のページ、ファイル、画像に関連づけることにあり、情報をよりわかりやすい形で伝達できたり、管理、配布が容易になることである。

2 電子メールと掲示板型コミュニケーション 

イントラネットにおいて、電子メールは重要な役割を果たす。電子メールを利用するメリットをまとめてみると、
 @確実に相手に届くことと、すぐに返事をかくことができること
 A一度に大勢の人へ即座に必要な情報を同時に配布することができる
 B過去のやりとりがすべて記録され、検索によりメッセージを調べることができる
このことにより連絡がすべて電子メールで済み、連絡だけの会議が必要でなくなり連絡のスピード化が行われる。
 通常の業務でインターネットを使う場合、通信料に配慮しなくてはいけないが、イントラネットでは電話回線等の通信回線を使用しない場合には、コストが全くかからない。また、イントラネットでは、外部からの侵入を防ぐセキュリティの面で安心度が高いため、個人情報を自由に流しても、個人情報が保護される。そして、インターネットでは、プロバイダーがセキュリティのためCGI等の特殊な技術を提供しないか、制限を設けているが、イントラネットではCGI等の特殊な技術を自由に使用することができる。
 CGIの技術を使えば、イントラネット上に電子掲示板を作ることができ、そこへ好きなことが書き込め、皆が自由に読めるようにできる。
 電子掲示板の特徴をあげると
 @ いやだったら別に見にいかなくても良い
 A 試行錯誤が十分に行え、質問がしやすい
 B 関係者で相互に対話できる
 C 時間や場所に拘束されない
 この電子掲示板を使えば、組織内の情報交換が容易におこなえ、相手に気遣うことも少ない。電子掲示板と似たものに電子会議室とチャットがある。電子会議室は、掲示に対するコメントを何階層にも渡って書き込めるという点が違っている。チャットとは、複数の人間が同時に文字でおしゃべりをするシステムである。このようなコミュニケーションを、ここでは便宜上掲示板型コミュニケーションと呼ぶことにする。
 インターネット上の技術にIDとパスワードでWeb上での情報の管理がある。こういった情報管理技術と掲示板型コミュニケーションを組み合わせると1対多の双方向のコミュニケーションが容易に行えてしまう。この「多」というのは不特定多数だけではなく、情報管理技術で制限された「多」も含む。こういったような情報管理技術と掲示板型コミュニケーションを組み合わせたものも、同じく、掲示板型コミュニケーションと呼ぶことにする。
 これまでに、幾多の通信技術の発達があった。電信、電話により、遠距離での通信が可能になり、ラジオ、テレビの出現により、電波等が届く不特定多数の人に情報を流すことができた。インターネットの進展が、個人の世界に向けての情報発信を容易にした。しかし、これは、1:1の双方向あるいは1:多の一方通行の通信であった。現在までの社会は、こういった通信によって成り立つ社会であった。現在の通信技術により世界でおこることが即時に流れ、世界は1つといった様相を呈してきた。そこに現れたのが掲示板型コミュニケーションで、1対多の双方向の通信が可能になった。掲示板型コミュニケーションの普及により、組織内の情報交換が容易に行える。組織内だけでなく、関係組織を含めた情報交換、支援が行える。
 例えば学校に限定して考えると、校内イントラネットの中で、組織(児童・生徒、職員を含む)ごとにIDとパスワードを設け、掲示板型コミュニケーションを使うことにより情報交換、支援がおこなえ、学習指導、生徒指導、進路指導、各種会議、学習活動等幅広く利用できる。ここで大事なことはイントラネットの中での行為のため、個人情報が保護されていることから、活発な情報交換が期待できることである。また、イントラネットの対象範囲を広げて、学校、家庭、地域、他必要な関係機関(例えば病院)とイントラネットを組めば、相互の連携が容易になり、学校だけで解決できない教育問題に、学習活動に支援の和が広がり、知恵の連環が生まれることが想定される。
 社会は組織で動いている。組織が機能するためには、ある種の意志決定が必要である。そこでは必要な情報を探し、広く意見・質問を受け、情報を処理し最適な選択をいち早く決定しなくてはいけない。 その意志決定を掲示板型コミュニケーションが支援する。そこで大切なことは、いかに情報を処理し、決定していくかの扱う者の能力が問われる。その能力と掲示板型コミュニケーションが組み合わされれば、意志決定にスピードと正確さが加わり、
組織が活性化、ひいては社会全体の活性化につながる。その意志決定はどこでも行われるが、特に社会生活に重大な決定をする政治、経営、軍事、法曹、医療、教育に影響を与え変革していくことが想定される。
 そこで大事なことは、著作権や個人のプライバシーの問題、いかがわしい情報や技術を克服しながら、情報をいかに必要なところに隈なく流していくかの情報の制御の問題である。情報の制御技術が、水を制するものが国家を征するのと同じくらいの価値をもつことが予想される。情報を制御する技術は、イントラネットを含めたネットワークの敷設のしかたの問題やソフトの問題へと発展する。また、情報を受ける側は、情報をいかに入手し、情報の真偽の判断を含めて、適切に処理していくかが問われ、教育に期待されていく。そのネットワークにいるものの責務として、問いかけ、意見に対して、自分の持っている確かな知識、技術を駆使して答えたり、協力していく姿勢が大切になる。そして、ネットワーク内を流れる情報を見て、趣旨からいって適切であるかを判断するネットワーク管理者の資質
と人材の充実が重要になり、現在はそれを技術者が担当しているが、情報の内容を判断し、よりよい方向に導き処理するアドバイザー的人材が必要になる。また、ネットワークがうまく機能させるためには、性格、経験、考え方などの点で異質なメンバーで集団を構成し、メンバーが自由に意見、質問などのコミュニケーションがとれるような環境にしておく必要がある。
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