2月5日(木)人間ドック1日目

 朝の9時から検査が始まった。胃カメラの検査があり、待合室で待っているとき、近くの女性看護士に訊いてみた。

「胃カメラを以前受けたときは、大変苦しかったのですが、検査で死んだ人いますか」

「そんな人はいません。ただ、麻酔の副作用があります。何かアレルギーはありますか」彼女は乾いた口調で言った。

「それはないです」丸山先生は答えた。

その検査の順番がきて、胃の筋肉等を弱くする注射が打たれ、のどのうがい溶液を飲んで臨んだが、嘔吐が多くひどい目にあった。

 その後部屋に戻り、同室のドック患者に胃カメラの検査について訊いてみたところ、2年前は痛くなかったが、今の検査は痛かったと言う。

 部屋を出て看護婦に訊いてみると、胃カメラの検査ですが以前は麻酔を打って痛くなかったが、1年前に麻酔で呼吸停止にまでいった人がいて、麻酔を打つことをやめたという。それでは、麻酔を打つかどうかアンケートをとり、患者の判断にまかせたらどうかと訊いたところ、提案してみるということだった。
  1日目の検査が終わり、ドック患者に対して無料で受けられるサービスの中に、足つぼマッサージがあった。案内のあった通りに行くと、そこは離れの食堂と美容院の間にあった。足の裏を見せながら、足つぼのマッサージの人が話しかけてきた。
「職業の中で教員だけ過労死とぼけが多いですよ。また、アキレス腱を切る人が多いです」

丸山先生は、心にあたるものがあり頷いた。

「建前では、土日休みになっているにもかかわらず、土日まできてしなくてはいけない仕事がいっぱいあるのか。1年中、働き詰めではないか。学校では、忙しい人のところに、仕事がまわってくる。その人が死んだら、学校の機能が停止してしまう」

彼は、足の裏を覗き込んで、

「この足の裏、ひどい。割れています。いつ死んでもおかしくないです。軽石で足の裏を磨き、馬油を塗ればよい」溜息をつきながら言った。

「ためしてみます」と応じ、

彼は、しみじみとした口調で、諭すように、
「わたしは元教員です。中国で学んできました。中国奥地は、貧しいです。 その技術を、いろいろな人に伝え、雇用に役立てています。あなた教員をやめて、好きなことしたらいいですよ」

 午後6時半ごろ食事があり、その食事中「我々が注意すべき感染症とその対処法」というタイトルで、スクリーンを使ったプレゼンテーションがあった。

その話を聞いたドック患者が、手を上げ質問した。

「子どもを病院に連れていったところ、インフルエンザの陰性で座薬はボルタレンであった。しかし、今の話でアンヒバ以外危ないとわかる。インフルエンザに効くのはタミフルで、その薬がもらえるのは症状が出た3日後で、それでは遅いと思うのですがどうですか」

それに対して説明した人が答えて、

「そうですね・・・・・・。病院には人の話を聞かない人が多く、特にこの地方は多いんですよ」

丸山先生が間に入って、

「どれくらいの割合ですか」

「個人的な見解ですが、年齢に関係なく6割です」

「残りの4割の名簿をもらえないですか」

「それは無理です。個人的見解です」

 こうなるとどの医者にあたるか不安になる。もし人の話を聞かない医者にかかったら、最新のデータに疎いことから、間違った診断を下す恐れが高い。ひどい目にあい、最悪死に至るのか。今はやりのインフルエンザ。医者にかからないように予防が大事だとわかった。