2月16日(月)

 職員朝礼が終わった後に、体育科の先生より野外実習という科目を学事システムに登録して欲しいという依頼があった。野外実習は、不定期に行われることから、年度当初の学事システムへの科目登録が未だされていなかったのである。

11時40分に3年生の成績結果について商業科の会議があり、以下の通りの報告があった。

3BC情報処理(場所:第1情報室 担当:三邦先生と丸山先生)

・ 欠時限度オーバーのため未履修者1名 

・ 赤点2人(理由は検定に一回も出ていないため0点扱い。その内一人は、授業は真面目だったが、規定の30点以上に到達しなかった。)

・ 赤点3人(理由は授業中に寝ていたり、お絵かき、むやみに座席移動したりして態度不良。授業に参加していないので、出席点は0点。検定である程度点数をとっているが、総合的に赤点をつけた。)

3BC情報処理(場所:第4情報室 担当:楢崎先生9月より応援に三邦先生が加わる)

・赤点 なし

3JK情報処理(場所:第1情報室 担当:三邦先生)

・ 赤点 なし

3JK情報処理(場所:第4情報室 担当:丸山先生と楢崎先生)

・ 赤点 2人

簿記(担当 楢崎先生)

・ 赤点 なし

プログラミング(担当 ××先生)

・ 欠時限度オーバーのため未履修者1名 

主任の三邦先生が成績表を見て、丸山先生に向かって、 

「あなたの講座に赤点が5人もいて、他の講座とのバランスが悪いのですが」

と言った。

「検定・定期考査の成績は5割で、提出物含む態度で3割、出席で2割ということで、前期成績、後期成績をそのルールのもとに出しました」

「授業に参加していようがいまいが、実際にその場所にいるのだから、出席点0点はあんまりではないですか」

「実態にあわせて、出席点をつけましたが。実際に授業に参加していようがいまいが、その場所にいることで、出席としてカウントし、出席点をつけるのであれば、その3人とも検定である程度、点数をとっていますので、赤点にはなりません」

「ではそうしてください」主任の三邦先生が安心したように言った。

「確認しますが、課題も提出し、真面目な生徒が赤点になり、授業で不真面目な生徒が、検定・定期考査で点数をとっているため、赤点にならない。それで、よろしいですか」と丸山先生は訊いてみた。

「しかたがないことですが、そうなります」と返答があった。

 6限目の空き時間に、今朝、依頼のあった野外実習の学事システムへの登録の件で、学事システムのサポート会社と電話でやりとりをしていた。そのやりとりの中で、野外実習についてどんな科目かわからず、しきりに学事システムの画面を見て操作していた体育科の尾坂先生に訊いてみた。

「野外実習らしい科目ですが、どのような科目ですか」

尾坂先生はいきりたち、強い口調で

「野外実習らしいて、どういうことや。その『らしい』てどういう意味や」

時間がないのでそのままにして、依頼者の先生のところへ訊きにいったところ野外実習の参加生徒は2人で、成績を入力できるようにして欲しいとのことだった。

野外実習の科目について対応していたため、放課後の校務運営委員会に少し遅れて参加した。

年間行事計画の件で成績伝票提出というのが入っており、学事システムが導入されてからは必要のないものになっていたので削除するように求めた。学事システムが導入されて3年もたっているのに、未だにその名前が残っていることは、3年間も間違いが続いていたことになる。その間、誰も不思議に思わなかったのだろうか。

卒業生の皆勤者表彰の件があった。大雪で公共のバス、スクールバスが遅れた場合は、遅刻にはしないが、同じ状況で、生徒が保護者の自家用車で送ってもらって遅れた場合、遅刻にしているという噂がありますと言ったところ、大須磨教頭は事実だと言い、吉沢校長は何も問題がないということだった。

生徒会功労者推薦の件で、部活動で功績のあったDという生徒は、名前が挙がらなかった。その理由は、遅刻が多かったり、大会に参加しないことがあったからだという。詳しく事情を訊くと、経済的理由によるものらしく、やむをえない理由があるということだった。

 丸山先生は楢崎先生とのやりとりを思い出した。校内ランの配線の関係から、第2情報室にあるマックのパソコンを美術のデザイン室に移動してはどうか。1階職員室と美術のデザイン室の間の中庭の地下に重油タンクがあるという。 あそこに駐車することがありますが、危険ではないか。今、プレハブの建物で、剣道部、空手部等が練習していますが、あそこに3階建ての建物がたつということですが、どの程度進んでいるのかと訊いてみたところ、芸術科の先生がマックのことについて、よけいな口をはさむなということであった。

 美術科主任を含む2人がマックのデザイン室への移動を希望しているにもかかわらず、このことをこの会議に持ち込むなというのはわからなかったが他に意見もなく終わってしまった。

 会議終了後の午後5時半に、一旦は1階の職員室に入ろうとしたが、体育科であり総務課長の尾坂先生のいきりたっていた様子を思い出し、2階への階段を駆け上がろうとしたときに、尾坂先生に会った。

「何か、ご用ありますか」と言うと

鋭い口調で怒鳴って言うには、

「野外実習らしいとは何や。いいかげんにせいや」

階段のことでもあったからか、

「ちょっと来い」

連れていかれたところが、職員室の隣にある会議室の廊下で、会議室は喫煙場所になっていた。

「野外実習についてわからないから訊きました」
「野外実習については、以前から何度も放送等で言うとるぞ。おまえ本校の職員か。野外実習 らしい とはどういうことや」怒気を含んだあたりの空気をふるわせる声で言った。
  あまりにも怒鳴り声が大きくて、職員室から一人出て来て、廊下でそんな声を出されると困ると言うことで、中の会議室に入った。そこには、大須磨教頭と元生徒指導課長がいた。
「野外実習の科目は、学事(システム)には昨年ありませんでした。今年、新たに学事(システム)に登録してほしいことを、今日の朝、聞きました。明日、学事(システム)の締め切りなんですよ。その仕事を、本日の7時半までにしなくては、いけない気持ちをわかってください。あなたの、わたしが『らしい』と表現したことに対して不満を持っていることはわかりました」
  丸山先生はこう言って、まるく収めたが、『本校の職員か』という言葉が気になった。
  午後7時をまわった頃、事務室だけがいつものように明るく、中にいつも会う警備員が終わるのを待っているかのようにいた。その事務室から、体育科で特活課長の国元先生に電話で野外実習について正式名称を訊くがわからないと言う。教育課程表で調べたら、野外実習の科目がなく似た言葉に野外活動があった。この学校では機械警備になっており、午後7時半前には下校しなくてはいけなかったため、時間が迫っている。学事システムへの登録は一時中断し、明日に持ち越すことにした。