1月31日(土)

 朝9時頃、丸山先生が学校に出てみると職員室に3人の先生がいた。その内の総務課で職員会議の記録していた先生に訊いてみた。

「職員会議の議事録見せてください」

「いいですよ」

 そこで早速、面倒見の良い学校について触れてあるのところが、4月の職員会議にあるとのことを思い出し、該当の個所を調べた。その個所をコピーして良いか訊いてみたところ、だめであった。 記録していたのだから、細大漏らさず記憶していると思い、訊いてみた。

「表彰規定のない表彰状てあるのですか」

「あるのじゃないですか。もらえるものだったらいいんじゃないですか」と返事があった。

「普通、子供が表彰状もらってきたら、子供に何でもらったのか訊くのではないですか」と不思議に思って訊ねた。

「なんらかの成績の規定あるのでしょうねー」

「やっぱり、成績の規定あるのでしょう。やっぱりあるんだ」丸山先生は自分の認識を確認するかのように呟いた。
  このとき、昨日の吉沢校長の慌てている様子がはっきり頭をよぎった。3階にあり、丸山先生がよくいる情報準備室から階段を降りてくるとき、階段を上がってくる吉沢校長とすれ違ったが、表情が硬く考え込んでいるようであった。そのため、眼の焦点があわないのか、こちらに気づかない様子で、無言で通り過ぎていったのを思い出した。また、昨日の晩に娘の通っている中学校の地区懇談会でのことを思い出した。帰宅してすぐの午後7時過ぎ、妻といっしょに町の福祉会館に出かけた車中で校長が自宅に来ているとの娘からの携帯電話にびっくりして、娘に確認したが校長とは違うということで、よくわからないことがあった。

 何かあるとしかいえない。何かある。何かを隠し、恐れている。校長、教頭、教務、いや学校全体か。とまどいながらも、調べたいという強い衝動に駆られていった。

 教務のパソコンが、校内ランと一部つながっていたことを思い出した。昨年の12月に、第1情報室を商業科の先生と一緒に整備していたときにわかったのだが

生徒が使っているパソコンから、先生用のパソコンの中身が見えていたのである。それも校内ではパソコン通として知られてい

る大須磨教頭のパソコンの中身が見えたことを複数(商業科の先生)の眼で確認した。

「入試が近い。学事(システム)とは、関係ない。何かあったら、教務のせいや」広い職員室で、ぼそぼそと独り言を言った。

 それから、校内ランのサーバーパソコンが置いてある3階の情報準備室へ行った。つくとすぐに電話が鳴り、電話に出ると江島先生であった。

「さきほど職員室で、教務のパソコンがどうとかこうとかとのことで

すが、どういうことでしょうか」「前の職員会議でいったように、校内

ランは危険なのではないか。今は、教師エリアと生徒エリアが物理的

に遮断され、生徒用パソコンから、教師用パソコンに入ってこれない

ようになっている。しかし、この前まで、生徒パソコンから、先生用

パソコンの中身が見えた。今年の入試は大丈夫だろうか。昨年も含め

て、過去の入試データが改ざんされている可能性が否定できない」

「(大須磨)教頭が過去4年間教務にたずさわっていました」

「多くの先生方は、定期考査問題を校内ランにあるパソコンに保存し

ており、ひょっとして、定期考査問題、成績が漏洩、改ざんされてい

ることも否定できない」丸山先生は不安な気持ちを吐露して言った。