第3章 原発の実態

原発の作業現場は素人だらけ

阪神大震災のとき、官庁のきびしい検査を通っているはずの新幹線の線路が落下したり、高速道路が横倒しになっていました。原因は何かというと、新幹線の橋脚部のコンクリートの中に型枠の木片が入っていたり、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良で溶接部が全部はずれてしまっていたからです。

 なぜこのようなことが起こったかというと、机上の設計ばかり重点を置いて、現場の施工、管理を怠ったためなのです。

 原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったりといった事故がたえず起こっています。その背景にあるのは、現場にプロの職人が少なく、設計どおり造られていないのです。

 昔の現場作業には、棒心と呼ばれる職人、若い監督以上の経験を積んだ職人が必ずおり、

自分の仕事にプライドを持っていて、事故や手抜きは恥だと考えていましたし、事故の恐ろしさをよく知っていました。

 それが 10 年くらい前から、作業員を経験不問という形で募集したため、現場には職人といわれる人がいなくなり、まったくの素人しかいなくなったのです。素人ですから、自分のやったミスが、どれだけの事故につながるかわからないのです。

 工事はマニュアル化されており、素人でも簡単に造れるようになっています。そのため、

自分が何をしているのかわからずに造っていくことになります。このことも事故や故障が

絶えずおこる原因のひとつです。

 原発ではさらに、放射能の被爆の問題があり後継者を育てることができないのです。原発での作業は、防護マスク着用での作業になるため、互いに話し合うことができず、もっぱら身振り、手振りで技術を伝えるしかないのです。そのため、技術を正確に伝え、教えることができません。それに熟練工ほど放射線を浴びすぎて、作業の継続ができなくなります。そのため、ますます原発作業現場は素人だらけになります。

いいかげんな検査・まったくの素人の検査官

 検査とは、その業務に熟知している者が検査しないと信頼のおける検査になりません。ところが、今の官庁がおこなう検査は、単にメーカーや施主の説明を聞き、書類さえあれば合格とするのが実態です。

 原発の事故があまりにも頻繁におこることから、各原発に原発の新設や定期検査後の運転許可を出す運転管理専門官を置いたのですが、それがまったくの素人なのです。たとえば、昨日まで養蚕の指導をしていた人やハマチ養殖の指導していた人、3ヶ月前までお米の検査をしていた人が運転管理専門官として赴任して、原発の運転許可をだしているのが実態です。

 読売新聞の記事に「現地専門官カヤの外」というのがあったのですが、これは東電の福島原発で緊急炉心冷却装置(ECSS)が作動した大事故を扱った記事です。そのときの

運転管理専門官が事故を知ったのは次の日の新聞で、東電の人は運転管理専門官がまったくの素人だと知っているため、知らせなかったのです。

 運転管理専門官の下に原子力検査協会の人がおりますが、この協会の人は通産省を定年退職した天下りの人で、原発とは畑違いでまったくの素人です。そのため、検査のことはわからず、ただ見にいくしかできません。しかし、大変な権限をもっており、この人がOKと言わないと仕事が先に進みません。その協会の下に電力会社があり、その下に日立・東芝・三菱の原子炉メーカーがあり、その下に現場作業を扱う工事会社があります。原発で働く人で、メーカー以外は上も下も素人なのです。

 阪神大震災の教訓から、全国にある原発の耐震設計の見直しがあり、その結果がその年の 9 月に発表されましたが、「どの原発も、どんな地震が起きても大丈夫」というものでした。ところが、 1993 年に起きた女川原発1号機の事故は、震度4くらいの地震で原子炉の出力が急上昇し、自動停止しました。 1984 年に震度5で自動停止するように工事していたのですが、震度5でないのに自動停止してしまったのです。設計通り工事がなされていないことを示すものでした。

 原発は1回動かすと、中は放射性物質、放射線でいっぱいになります。1年くらい運転すると、運転を止めて定期検査をします。そこで働く作業員はたえず放射線を浴びて作業をしています。防護服を着ていますが、放射性物質を外に持ち出さないための単なる作業着で、たえず放射線を同じように受けており被爆しています。

 原発では、定期検査が終わるたびに、海に放射能を含んだ水が何十トンも流しています。

原子炉は高熱をだすため、海水で冷やして、海に捨てます。それが放射能を含んだ温排水を毎分何十トンにもなります。ですから、放射能で汚染されているため日本列島近辺で取れる魚で、安心・安全な魚はほとんどありません。

 過酷な作業環境

 原発で初めて働く作業員に約5時間かけて放射線管理教育をおこなうのですが、この教育の目的は、ガンや白血病になるのは大嘘である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと洗脳し、不安を解消させることです。

 現場の責任者は、オウム真理教の麻原以上にマインド・コントロール(洗脳教育)をし、多くの人が死んでいきました。現場の人は、放射能が危険であることを一切知らされていないため、体の具合が悪くなっても、原発のせいだとは全然考えないのです。作業員は、原因もわからず死んでいくのです。

スリーマイル島とかチェルノブイリに匹敵する大事故をたびたび起こす原発

1989 年に、東京電力の福島第二原発で再循環ポンプがバラバラになった大事故も、世界で初めての事故でした。

そして、 1991 年 2 月に、関西電力の美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や海へ大量に放出した大事故でした。 この事故は、 多重防護の安全弁が次々と効かなくなり、原子炉の中の水が外に出て、 0.7 秒遅れたら炉が空焚きになるところだったのです。その日は土曜日で職員が手薄だったのですが、たまたま熟練した職員のとっさの判断で原発の安全を守るための最後の砦であるECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で動かして原発を止めたのです。そのため、世界を巻き込むような大事故に至らなかったのです。

 この事故は、 2 ミリくらいの細い配管についている触れ止め金具、何千本もある細管が振動で触れ合わないようにしてある金具が設計通りに入っていなかったのが原因で、施工ミスでした。そのことが 20 年近い何回もの定期検査で見つからなかったのですから、定期検査のいい加減さが表面化した事故でもあったのです。

 こんな大事故を起こしても、国は事故とはいわなく、事象があったという誤魔化しの言葉を使ったのです。

1995 年の 12 月 8 日に、福井県の敦賀にある動燃(動力炉・核燃料開発事業団)のもんじゅでナトリウム漏れの大事故を起こりました。もんじゅの事故はこれが初めてではなく、それまでにも度々事故を起こしていました。この事故の原因となった温度センサーの規格

が、該当のメーカー同士で話し合いがなされなく、施工したときに危ないとわかっていた人がいたはずですが、自分の会社の責任でない、よその会社のことだからほっとけばよい

と判断されたのです。

 世界の原発の潮流は縮小傾向にあります。また、プルトニウムを使う高速増殖炉も、多くの先進国がやめています。日本だけがやめないのですが、なぜかというと、日本で一旦始めたことは、途中でやめる勇気がないからです。特に官庁では、末端には前年度とらわれないように指導しているが、上層部では前年度踏襲をやめられない、やめようとしないのが実態です。

 東電の福島原発の1号機は、 1981 年に開始から耐用年数の 10 年たち、廃炉・解体予定でしたが、莫大な費用と大量の被爆が避けられないことから、廃炉にすることができなかったのです。

原発を売り込んだアメリカのメーカーが、作業員を送り、考えられないほどの大量の被爆をさせて、原子炉の修理をさせ、運転させたのです。その原発が今大事故で話題になっている原発です。最初に耐用年数 10 年といっていた原発が、約 40 年稼動している原発が他にも全国にあります。廃炉も解体もできずに、修理して永久に稼動できるのか疑問です。地震がなくても、そのうち建物の老朽化で壊れる。それが明日か、 10 年後か、 100 年後かわからないが福島と同じことが必ず起こってしまいます。起こってしまったときは、原発の周囲 30 kmの避難区域、いや 80 km、 500 km、 700 kmの放射能汚染。沖縄を除いて、日本列島は住むところがなくなってしまうのではないでしょうか。

 先進各国では、廃炉・解体できないので、発電を止め、核燃料を取り出しておく「閉鎖」

がおこなわれています。放射能まみれになってしまった原発は、発電している時と同じように、水を入れて動かし続けたり、定期検査もして故障箇所の補修をし、放射能が外に漏れださないように放射能が無くなるまで、監視し、管理をし続けなければならないのです。 

 原発を運転するときに必ず出る核のゴミ(低レべル放射性廃棄物)が、全国の原発にドラム缶で約 80 万本以上溜まっています。その核のゴミは、 1969 年前は、近くの海に捨てていました。現在は青森の六ヶ所村へ運んでおり、 300 年間管理するとのことです。しかし、どこに捨てても、腐食して放射能汚染されますし、 300 年も管理できるのか。どうやって管理するのか。廃棄物会社が 300 年も続くのかどうか。はなはだ疑問です。

 多くの日本人は、「原発がとまったら、電気がなくなって困る」「少々怖くても仕方がない」と考えていますが、それは国や電力会社が「原発は核の平和利用です」「日本の原発は絶対に事故を起こしません。安全だから安心しなさい」「日本には資源がないから、原発は絶対に必要なんです」と、大金をかけて宣伝をしている結果なのです。実際は、風力発電、地熱発電、水力発電、太陽発電で十分まかなえる資源が日本列島にあったのですが、今までそれをしてこなく、原発がなくても良かったのです。放射能の汚染も含めて電力会社や政府は本当のことを日本国民にずっと隠して続けてきたのです。

電力事情

 日本の発電所は、発電と送電をひとつの会社でもっているため、地域に電源があっても、

その地域の送電設備のある会社を使うしかなかった。たとえば、東電管内では東電の都合のいいようにしか使えなかった。

 日本の電力事情からすれば、発電と送電を分けるスマートグリットを取り入れて、個々の企業で競争させることが、電力料金の値下げ、太陽・地熱・水力などのクリーンエネルギーの伸展および新ビジネスの発生で、国益になるわけですが、東電をはじめ電力会社は

独占企業である極めて有利な状態が失われ、競争につながることから、政治力、資金力でそういった議論さえ抑え込まれ、抵抗してきたのです。スマートグリットは多くの先進国で取り組んでいるのですが、こういった事情で日本だけ取り組んでいないです。

将来、原発がなくなると、電力が不足するというのは事実ですか

1 クリーンエネルギーとは発電時に燃焼を伴わず排煙 (CO2) や有害物質を出さないものを言います。原発は排煙を出しませんが放射性廃棄物を出すのでクリーンとは言い難いのですが CO2 を出さない事だけに着目しクリーンと言う事がいえます。一般には原発を除く自然エネルギー発電をクリーン発電と言います。これらは再生可能発電 ( 燃料が自然に発生、回復し枯渇しないもの ) と言いウランや石油のような燃料枯渇問題が原理的にありません。

クリーン発電は「可能ですか」と聞かれれば「可能」です。「現実的ですか」と聞かれれば「今は現実的には難しい」です。クリーン発電は原発推進の政策のため 1/100 程度の予算しかありません。これでは技術開発が進むはずも無く世界的にはクリーン発電後進国です。

その状態でも 1 億 3000 万 kW 以上の風力発電が可能であると試算されています。

http://econews.jp/news/electricnews/post_377.php

http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d6326713902c2d93ef1322925278af0c

原発に使っている予算を振り分ければ風力発電は近い将来主力発電になるかも知れません。

この他、火山国の日本は地熱発電も有望でもちろん全電力を発電する事などはできませんが、水力のように補助的にかなりの発電量を賄えると見込まれています。 4/24

2 脱原発は可能ですし、このラストチャンスに脱原発しなければ、 30 年以内に浜岡原発破綻で、東日本は破滅している可能性が高いでしょう。

@ 電力が余っているから

きちんと計算すると、福島が止まった現在も電力は余っているようです。

総火力 32,766,000 kW 39 機 10 系統 42 軸

総原子力 4,912,000 kW 7 基

総水力 8,671,380 kW 162 ヶ所

協力 1,050,000 kW 3 機

東電総発電量 50,029,542 kW 228 ヶ所

最大電力需要が 41,000,000 kW

だから余裕が 9,000,000 kW もあります。

詳細はこちら参照⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/semidalion/44831507.html

私も、テレビと新聞の大口スポンサーの電力会社の宣伝ばかり聞かされて、「原発がないと電力が足りない」と思っていました。ところが、現実は電力需要が人口減少に伴って減少しています。だから、電力会社は「電力不足」と叫びながら、電気自動車とオール電化の宣伝をすると表明しています(日経新聞2月25日)。東電はオール電化キャンペーンで原発二基分の需要を作り出したそうです(読売新聞 2011 年 3 月 23 日)

A 電力会社が原発大好きな理由

なぜ電力会社は4千億円という原発を造りたがるのでしょうか。それは電力事業法で『電力量収入=原価(発電所建設費など)+原価× 4.4 %』だからです。減価償却の済んだ火力発電所をもっていても儲からないが、四千億円の原発を持てば儲かります。原発は電力会社には必要でも、消費者には必要ありません。電力会社だって、日本がほろびたら元も子もないのですから、本当のところ原発は誰にもいりません。

B この地震列島に原発は危険すぎる

25 年以内に 90 パーセント来る東海地震の震央に浜岡原発が稼動中であり、これは今度来る直下型超巨大地震に到底持たないと設計者が言っています。福島は本州の東岸なので放射能雲は太平洋上空に拡散していますが、浜岡原発が破綻すれば、偏西風で放射能雲が数時間で関東平野から東北、北海道を長期間覆い続け、水源地も農地も放射能で汚染して人は住めなくなります。

今回の経験から、浜岡のみならず、偏西風が吹く日本列島では、原発の東側の地域はいったん原発が破綻すると、事態が終息するまでの数年間被曝することがわかりました。たとえば島根や若狭湾の原発群が破綻すれば、北風によって関西・中部・東海は全滅。滋賀・柏崎が破綻すれば冬の風で関東甲信越は全滅。静岡浜岡原発が破綻すれば、春から夏の風によって関東から東北にかけて全滅。青森、北海道の原発が破綻すれば北海道全域全滅。日本中が原発の危険にさらされている現実を直視すべきです。

C 省エネ技術で脱原発は可能

2010 年の総電力量に原発の占める割合は 23 パーセント。全国の照明を LED 化することによって見込まれる節電は 20 〜 25 パーセント。ですから、省エネ LED 化で原発はひとつも要らなくなります。代替エネルギーも大事ですが、省エネ技術なら即実行できます。このあたり、もっと調査が必要です。原発に注いできた莫大な国家予算を省エネ技術開発と代替エネルギー開発とに注ぎ込めば仕事は早いはずです。まあ、友人の試算だと LED 化だけで脱原発分は大丈夫みたいですが。

D 脱原発の手順

いますべきことの第一は電力事業法改正、第二にオール電化・電気自動車キャンペーンをやめさせる。第三は、全原発を停止して一年冷やし廃炉。バックアップ用火力発電に一時切り替える。第四に全国のすべての照明を省エネに切り替えてゆき、順次火力発電を停止することです。これで脱原発と安全な新しい日本つくりは可能です。 4/1

参考 ・引用 文献  原発がどんなものか知ってほしい     平井憲夫

http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html